2016年12月にPhab2 Proを入手してから約半年、Tangoについて溜めに溜めた知見をドバっと書きます。
Tangoとは?
https://get.google.com/tango/get.google.com
色々なところで書いているので、簡単に。
- Googleが開発しているARプラットフォーム
- 対応スマートフォンが必要
- 現実と仮想が融合したARができる
ポイントとしては、現実と仮想の融合の部分。そして、Googleが大きなビジョンを描いているというところ。
マーカレスARとの違い
Tangoは、Appleが発表したARKit、クロスプラットフォーム対応のKudan AR SDKとは、一線を画すものだと思っています。
ARKit、Kudanは単眼カメラを用いたSLAMという技術を使って、画像処理により平面推定やトラッキングを行う仕組みです。メリットとして、既に普及しているデバイスで幅広く利用できます。
対するTangoは、デプスカメラ(深度センサ)を搭載しているので、物体までの距離(PointCloud)がリアルタイムに取得できます。モーショントラッキングもIMUが使われており、ハードウェアがベースです。
これをネガティブに評価すると、「対応デバイスがないと動かない。普及するの?」となります。ですが、個人的にはポジティブな面を評価していて、「ハードウェアで処理しているので、リアルタイムで速い。デバイスの計算資源を他の処理に回せる」と捉えています。
わかりやすい例が、オクルージョンとメッシュ再構成(3DR)です。
オクルージョンの例(WebARについては後で説明)
WebARで透過、ワイヤーフレーム表示。Three.jsと同じ感覚で、シーンにオブジェクトを置くだけ。 pic.twitter.com/wRQWduLa5H
— jyuko (@jyuko49) 2017年5月24日
手をかざすと、その部分だけオブジェクトが隠れます。これは、PointCloudを高速に更新できているからこその遮蔽処理で、単眼カメラではなかなか難しいと思います。
次にメッシュ再構成の例。
Tangoの3DRをチューニング中。 pic.twitter.com/S854dmJ6fP
— jyuko (@jyuko49) 2017年2月28日
デプスカメラがPointCloudの取得を行なってくれる分、CPUを画像処理ではなくメッシュの構成に充てられると考えてみてください。結果として、リアルタイムにメッシュを更新できるので、その場でパッと空間検知して、現実と仮想のインタラクションを開始できます。
このあたりを活かそうという発想で開発しているのが、クエリちゃんズ(仮)です。
動画だけ見ても判断が付かないと思いますが、事前に空間をスキャンしてプレイエリアを作っている訳ではなく、リアルタイムで透過のメッシュ構成を行なっており、アプリ起動したら即ゲームをスタートできるように作っています。
実家でクエリちゃんズのテストプレイ。だいぶ良くなってきたかな。#Tango #クエリちゃん pic.twitter.com/uZHdniUZRz
— jyuko (@jyuko49) 2017年5月4日
ライバルはHoloLens
モバイルARとしてARKitと比較されそうなTangoですが、デバイスの形状こそ違えど、ARの機能に関してはHoloLensに近いです。
Tangoと比べた場合、HoloLensのメリットは以下だと思っています。
正直、ユーザ体験の部分では、Tangoは分が悪い。
- 網膜投射型でスマートフォンをかざすよりも没入感が大きい
- 両手が自由でジェスチャーが使える
優位性があるのはコストパフォーマンスで、HoloLensが30万オーバーなのに対し、Tangoは5-10万円で入手できます。普及の観点では、デバイスの選択肢が増えて知名度が上がれば、スマホを機種変する感覚で広がりそうな点は大きいです。
HoloLensは魅力的なデバイスではあるものの、30万円出すならもう少し・・・と感じる部分もあり、デベロッパやビジネスユーザではないエンドユーザに普及させるには1つの障壁がある気がします。性能アップした上で価格が下がって欲しいところ。
ちなみに、個人的に購入に踏み切れない一番の理由として、Win機持ってないんですよね。あと、モバイルWeb出身のエンジニアなので、モバイル分野でのWindowsの存在感の薄さも気になってしまう。
GoogleがTangoで描くビジョン
TangoはGoogleが提供しているプラットフォームなので、Tango自体が目指す方向性を理解した方が恩恵を受けられます。巨人の肩に乗るというやつ。
その中で外せないキーワードが、屋内マップの構築とAR空間での広告・ナビゲーションです。
http://getar.jp/18705/getar.jp
TangoにはArea Learningという機能があり、空間の座標系と特徴点を記憶することで、オブジェクトの位置復元やデバイスの位置推定が行えます。記憶した情報はADFというファイル形式で保存でき、デバイス間で共有できます。
つまり、誰かがTangoを持って歩いた情報を共有して、そこでデバイスをかざすと自分の位置がわかります。Google I/O 2017で発表されたVPSの基礎は既にできており、『屋内のGPS』という表現も非常にわかりやすいです。
このVPSを念頭に置くと、建物内の移動を想定した使い方はTangoの本質を捉えていると思います。
もう一点注目すべきなのが、こちらもGoogle I/O 2017で触れられていたWebARです。
こちらは、GET ARに寄稿した記事に現時点での情報を書いています。
http://getar.jp/19010/getar.jp
1-2年後、TangoがAndroidスマートフォンに普及した前提で、WebARがChromeに正式サポートされることになれば、ユーザはブラウザをアップデートするだけで、Tangoを利用したサービスが受けられるようになります。
ここでいうサービスには前述の屋内ナビも含まれ、利用したユーザからArea Learningしたデータを提供してもらえば、屋内マップは新しい状態に保たれるので、ユーザとサービス提供者の間でエコシステムが完成します。
これが、GoogleがTangoで描くビジョンと想定しています。
最後に
Google Tangoに関する研究成果をまとめた動画だそうです。
リアルタイムの空間検知で物体を区別できるところまで進んでいますし、家具が消える表現の自然さはヤバいです。
なお、飛行するドローンの制御に使うという着想には私もたどり着いたので、興味があれば見てやってください。カリフォルニア工科大学には敵うはずもないですが。
どうでしょう、Tangoやりたくなりませんか?
クエリちゃん使いたくなりましたよね?
DOWNLOAD | クエリちゃん公式サイト
なったとしたら、布教成功です。